【採用事例①】株式会社ベネッセコーポレーション様 | UDデジタル教科書体

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学校教育におけるICT活用に関心が高まる中、株式会社ベネッセコーポレーション様(以下、ベネッセ)のデジタル教材には、新書体のUDデジタル教科書体を採用していただきました。また、以前からベネッセの教材には弊社書体を活用いただいており、そのはじまりは2008年まで遡ります。

今回のインタビューでは、小学校低学年の文字学習指導をご担当の鈴木さんに、UDデジタル教科書体を採用していただいた背景や、子どもの文字学習に求められる書体デザイン、ここ数年での教育現場での変化など、色々な話を伺いました。

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デジタル教材が今よりずっと低解像度だった数年前から、文字学習に適した書体を探していました

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――2008年からベネッセの教材には弊社書体をご利用いただいていますが、鈴木さんと初めて仕事をさせていただいたのは、2012年頃のビットマップフォントだったかと思います。当時の状況を改めてお聞かせいただけますか

タイプバンク様とは、以前いた部署で開発していた文字学習をするためのデジタル教具で使用するビットマップ文字画像作成にご協力いただいていました。当時のデジタル教具は今のような液晶画面ではなく、電卓ぐらいの非常に粗い解像度のディスプレイでした。そういった低解像度な環境でも文字指導が可能な数ドット単位での書体を必要としており、ひらがなを指導するデジタル教材のためのビットマップ画像を制作していただいていました。「書き順の指導をするため、1画ずつバラバラの画像が必要である」「学校で使用されている5教科書の文字をベースにした、汎用的な字体である」「子供が字形を認識しやすいよう配慮する」といった、文字学習の指導をする上で重要な要件をクリアできるよう細かい調整にご協力いただき、助かっておりました。

▲弊社ビットマップフォントが採用された「かきじゅんマスター」という教材の実際の画面。学習したい文字を選んで、その書き順を確認できます。現在のタブレットの液晶画面と比較するととても低解像度だったことがわかります。(※過去の教材のため、現在は作られておりません。)

1606_2 ▲当時制作したビットマップのサンプル画像。低解像度の画面でも書き順やハライなどが認識できるデザインになっています。一画ずつバラバラのビットマップ画像をひらがなや漢字ひと文字ごとに作成し、書き順を指導する教材に採用されました。


デバイスが高解像度になっても、書体に求める基本的な機能は変わらず「認識しやすく」「学校で使用する字体・字形に沿っている」こと。その要件をUDデジタル教科書体は満たしていました

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――デジタル機器の性能がここ数年で飛躍的に向上して、現在では高解像度の表示が可能になりましたが、教材に使用する書体を選ぶ際のポイントに変化はありましたか。

弊社は2014年度から「チャレンジタッチ」というタブレット教材を提供させていただいており、その中で私は小学校低学年向けのものを中心にタブレットでの文字指導の教材開発を担当しました。タブレット型のデバイスでは、それまでの低解像度で表示可能なビットマップではなく、高解像度な液晶画面でも表示が可能なデジタルフォントが新たに必要になってきました。

書体に求める機能そのものは、学習的な観点で見るとビットマップの頃と同様、学校で習う形に則り、一画ずつバラバラで、低学年の子どもが初めて文字に触れる時に適した字体ということが、書体選びのポイントとなっていました。

また、どのような字体をお手本とするかは、低学年の文字学習では重要な観点だと考えています。例えば明朝体の漢字をお手本にした場合に、まっすぐな線で書けば正しいところを、一生懸命まねして書いた子がわざわざウロコ(下図参照)をしっかり書いてしまうというケースがあります。初めて文字に触れる子どもたちにとっては「書体の差」の判断はとても困難ですので、そういった混乱が無いように、極力なぞりやすくシンプルな線でできていて、かつ、ハネやハライなどその文字にとっての字体の重要な要素はしっかり抑えられている書体が必要だと考えていました。
UDデジタル教科書体はそういった部分の要件を特に満たしていると思いまして、小学校低学年向けのひらがな・カタカナ・漢字の指導用フォントとして採用させていただきました。

1606_4 ▲明朝体で漢字の練習をした場合に、初めて文字に触れる子どもにとってはウロコがついた形が正しい字形であると誤解をする恐れがあります。そういった文字学習の際の混乱を防ぐために、UDデジタル教科書体はシンプルなエレメントを持ち学習指導要領に準拠した字体でデザインされています。


デジタルでの文字学習を提供するために必要な配慮がなされていることが、UDデジタル教科書体を採用したポイントのひとつ

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すでに、ベネッセ内には紙教材を中心に共通で使用しているオリジナルの教科書体と硬筆体があります。特に、小学校低学年向けには、初めて文字学習に触れる子どものために、鉛筆でなぞりやすい硬筆体でのなぞりがき指導をしています。硬筆体は比較的細めなデザインの書体なので、鉛筆で書いた字のお手本としては最適です。

ただ、タブレットの画面をタッチペンでなぞる場合には、画面に触れる面積が鉛筆より大きくなるため、ペン先とモニタ上の座標に微妙なズレが生じて、多少の書きにくさが出てきます。デジタル教材では、そういったモニタ上でどうしても生じてしまう手書きのブレを許容できるような書体が必要だと感じていました。発達段階的に、まだまだ運筆に慣れていない小学校低学年の子どもに、デジタルでの文字学習を提供するために必要な配慮として、硬筆体よりも太く、認識しやすい=なぞりやすいUDデジタル教科書体はぴったりだと考えました。
1606_9 ▲教材の形態に合わせて、それぞれに適切な書体が選ばれています。紙に鉛筆で書く場合には硬筆体が適していますが、モニタ上を指やタッチペン等でなぞる場合には太さの強弱を通常の教科書体よりも抑えているUDデジタル教科書体が適しています。

2 ▲UDデジタル教科書体が採用された「かきかたせんせい(ひらがな・かたかな)」のサンプル画面。タブレットの画面上でお手本をなぞって練習ができ、お手本と自分の字がどう違うのかも確認ができるようになっています。

1 ▲なぞり書きの後には、ノーヒントでの出題もあります。ただ問題が出てくるだけではなく、復習がセットになっていることで、しっかりとその字を習得することができます。

5 ▲正解すると嬉しくなるようなアクションがあるので、モチベーションの継続にもつながります。

▲実際の操作画面です。最初は書き順をよく見ながらお手本をなぞるところからスタート。

▲なぞり書きをした後はお手本を見ずに復習をします。

▲単語の穴埋め問題も用意されています。問題を間違えた場合には、どこの形状がどのように違うのかわかりやすいメッセージが表示されるので、繰り返し練習をすることで身に付くようになっています。


文字学習をする子どもに与えたい情報の考え方が、UDデジタル教科書体のコンセプトと共通していました

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――タイプバンクではフォントとして成り立つように作っていますが、教材によっては長い文章で使用したり、なぞり学習で一文字ずつ使用したりと、学習する目的に合わせて調整が必要になった部分もあったかと思います。教材に使用する際に工夫された点などはありますか

小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」は原稿用紙に書く練習を兼ねているので、一文字のマスを四分割した右上におさまるサイズに調整していただいたのと、濁点や半濁点の大きさを手書きに合わせて少し調整していただきました。あとは一部の字をベネッセの仕様に合わせて微調整したのみで、その他はほとんど変更はしていません。根本的な、子供に与えてあげたい情報の考え方が一致していたおかげだと思います。

1606_5 ▲学校教育の教材では、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」は一文字のマスを四分割した右上におさまるサイズで練習をします。通常、読み物として長い文章を組む際に読み易いとされているデザインは四分割よりも大きくできているので、ベネッセの教材用に特注のフォントを制作しました。

――実際に教材を使用したユーザ様から反響などはありましたか

文字については、「読みにくい」「なぞりにくい」「教科書と違う」といったネガティブな声はすぐに出てきますが、今回採用させていただいたUDデジタル教科書体については特にそういったネガティブな声は全く出ていません。ですので、今のところ問題なく使っていただけているのかなと感じております。 フォントは縁の下の力持ちなので、「他のフォントに比べてわかりやすい!」という視点は一般のユーザーからは出てくることはなかなかないですが、認知のしやすさや、教科書体であるということを合わせると、真摯に丁寧に作られたフォントがお手本になることは、文字学習アプリのベースの価値になっていると考えております。


開発したアプリ自体は好評価をいただいています

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――UDデジタル教科書体を採用していただいた「漢字サプリ」を実際に使ってみたのですが、瞬時になぞりを見せてくれるという仕組みがとてもおもしろいですね

小学校で実地での効果検証を行った中でも、アプリ全体としてわかりやすいと好評でした。 まだ習った事の無い文字を習得することが目的のアプリなので、ただ問題を出すだけではなく、本当にその字が習得できたかどうかがわかるように、翌日にノーヒントで出題されるなどの復習機能も付いています。文字のなぞりから始まって、きちんと習得されているかのフォローまでワンパッケージでできるという点が、指導をする上で非常に有効だったと先生方から好評価をいただきました。

IMG_0315 ▲「漢字サプリ」のサンプル画面。表示されているお手本をなぞります。このお手本が「UDデジタル教科書体」です。

IMG_0317 ▲書き順を間違えると、お手本と比較してどこが間違っていたのか確認ができます。

IMG_0318 ▲「つける」「はねる」など字体としておさえるべきポイントもしっかり学ぶことができます。

▲実際になぞる画面です。赤いガイドに沿ってなぞっていきます。

▲とめる、はねる、などの字体に関わるポイントを間違えるとアラートが出ます。


これからも新たな学習価値を届けていきたい

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――今後の教科書体開発において期待されることなどがあればお聞かせください

今後のデジタル教育ではいろいろなデバイス・解像度で表示されるようになっていくことを考えると、ユニバーサルデザインと教科書体の特長を持っていて、学習者にとって重要な「認識しやすい」エビデンスがある、という「UDデジタル教科書体」は重要だと考えております。このフォントはコンセプトがしっかりしていて、デジタル教育上かなり先行して価値を具現化できているアイデアだと思いますので、「小学生向けの文字の指導のためのフォント」として最適と考えて、低学年向けの指導に採用させていただいております。まだ我々も研究途中ですが、1画面上で子供が認識しやすい文字数や、文字サイズ・レイアウトなど、ユニバーサルデザインとデジタル教育はまだまだ奥が深いので、今後もタイプバンク様と情報交換をしながら、新たな学習価値を届けていければと考えております。

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記事の中でご紹介した教材などはこちらから

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» 進研ゼミプラス 小学講座|ひらがな・かたかな かきかたせんせい
» 進研ゼミプラス 小学講座|チャレンジタッチ
» 進研ゼミ|デジサプリ
» 特集記事|デジタル教科書のための新しい教科書体「UDデジタル教科書体」
» UDデジタル教科書体(書体ページ)

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フォントのご購入について

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「UDデジタル教科書体」は、パッケージ製品のTypeBank Select Pack 1/5にて取り扱っております。製品の詳細はこちらをご参照ください。
» TypeBank Select Pack 1/5

上記製品はこちらの弊社オンラインサイト、または取扱代理店からご購入いただけます。
» モリサワストア(オンラインサイト)


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