「タイプバンクのビットマップフォント」

「書体を創る」林隆男タイプフェイス論集 より抜粋

 ドットフォントを作るうえでまず大切なことは、明るくておおらかな字形をもたせるということです。どのようなドット数 でも、基本は次の点にあります。(1)与えられたドット数を有効に使いきる、(2)できるだけ文字を大きく作る、(3)線と線の空きを保つ、(4)無駄な 線を取り除く、(5)文字の大きさを同じにみえるようにする。

モデュール

 文字のデザインにはそれぞれの文字の大きさを統一するために、あらかじめ基準となる枠=ボディが必要となります。普 通、正方形を等分割したものをモデュール(基準寸法)として、その上に漢字、平仮名、片仮名、などの標準的な大きさ、各文字の上下左右の字並び線、文字線 の位置や長さなどをそろえるための基準を設定しています。ドット文字の場合は「画素」といわれる、与えられたドットがモデュールになります。
 例えば、従来の原字の漢字の大きさは、ボディに対して90%ぐらいに設定しています。しかし、ドット・フォントでは48×48ドットのボディーに対し、 46×46ドットのものがあります。これだと96%のレターサイズになります。このように大きな文字での文章組は、一見、ラインが揃ってきれいに見えます が、長文の場合にはとても読みにくく、疲れます。
 このように、モデュールはボディーとレターサイズの関係の明確化でもあり、可読性とか視認性などに関わる要素です。


エレメント

1-1  書体を構成する直線、曲線、はね、点など、これらをどういう表情にするかということで、書体の統一感が得られると同時に、その書体独自のイメージが表現できます。
 エレメントはまず、基本となるものを決めてゆきます。横線の太さ、横線の始筆の形、終筆の筆押さえである三角形のウロコの形、縦線の太さ、縦線の頭の筆 の入りや終筆の形、縦線の最後のはねの形、点、はらいやはねあげの始・終筆と横線や右はらいの最後のはねの形、それから、角ウロコなどがあります。

1-2  基本となるエレメントが決まると、次にそれのバリエーション・エレメント(右図)の形を決めなければなりません。例えば、一口に「右はらい」と言って も、爪のように垂直ぎみのものから、しんにゅうのように水平のものまでがあります。これら「はらい」の角度によって右端の切り口の角度が違ってきます。ま た、「点」の大きさや角度によっても形のニュアンスが変わらないように共通な形を決めておきます。
 エレメントは、書体の堅さと柔らかさなど質感に関わる要素です。


バランス

●形

 デザイナーが書体を紙の上にデザインする時、まず一番最初に、鉛筆で大ざっぱな骨格を描きます。もちろんこの骨格は次に説明する、大きさ、密度、重心な どを考慮しながら描かれます。ですから、骨格は単に細い線で引かれたときにバランスが良いというのではなく、線の太さや錯視などを考慮しながら描くわけで すから、肉付けされた字形の芯線に近い骨格を書くのは非常に大変なことです。 ●大きさ  文字は様々な形をもち、書体は様々な図形の集合です。書体は文字組みされた時、全ての文字ができるだけ同じ大きさに見えることが大切です。 ●形態  文字には、四角形、円、菱形、三角形など、それぞれ異なる図形の要素からなっています。異なった形を同じ大きさにみせるには、違った大きさに描かなくてはなりません。 ●線数  文字を構成している要素に画数があります。線数のすくない図形は線数の多いものより小さく描いて同じ大きさに見えます (下図)。文字も画数の多いものより、少ない文字を小さく書きます。また、偏の画数が少ないけれど旁の画数が多いものもあります。その逆の場合もありま す。このように相反する要素をもった文字構成もあります。そのため、同じ偏でも旁の要素が違えば基本的に偏の天地左右が違ってきます。

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●空間  文字には文字自身の領域というか文字の内側の空間があります。これを‘ふところ’といっています。どんなに文字を構成している要素が違っても、全ての文字のふところの大きさが視覚的に統一されていなければなりません。
●自然な形  文字は‘読む’ために共通認識された記号です。ですから、それぞれの文字が共通に認識された大きさをはみ出すと違った文字になったり、不自然になったり、読めなくなったりします。
●密度  書体は、出来るだけ全文字が同じ明るさ=黒味を持つものが良いとされています。そのためには、画数の少ない文字の線は 太く、多い文字は細くしなければなりません(下図)。しかし、画数の多い文字の線を一様に細くすると、細くなり過ぎ、違った書体のように見えます。そのた め、同じ太さの書体という印象を保つためには、1字の中でもある線を太く保ち、ある線を細く構成しなければなりません。また、ふところが小さくなれば黒味 も増します。ですから、密度は大きさの問題とも密接に関連しています。
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●重心  書体としては、全ての文字の重心が揃っていることが大事です。各文字の重心が上に行ったり、下に行ったり、左右に振れ たりというようにバラバラだと、各文字の中心軸や横軸、縦軸が種々に振れます。その結果、文字が上下左右にガタつき、文字組みが不安定になり、とても醜く 読みにくいものになります。また、重心を上に置いたり、下に置いたりすることによって文字組みの印象がかわります。ですから、重心を一定にすることと同時 に、どこに置くかはデザイン計画の重要な要素です。


 これらの、「文字を創るコンセプト」に従ってタイプバンク書体は現在、明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体、横太明朝体 のファミリーをほぼ完成させました。また、昨年新たにカリグラゴシック体を、そして今年前半にはクラシック明朝体、見出明朝体が完成する予定です。かな書 体としては、写植文字盤として発表された「小町・良寛」に行成、弘道軒、築地を加えた「味岡伸太郎かなシリーズ」をほとんどのタイプバンク書体のウェイト に合わせて完成させています。

 そして当時爆発的ブームを巻き起こした「タイポス」も現在デジタルフォントとして甦っています。

 ビットマップフォントは現在200数種にまでなっており、それらはすべてアウトラインフォントとの字形のイメージの統一が計られています(右図)。

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人物紹介「林 隆男」

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